2020年度 グランプリ賞品紹介①NA スーパーマクロコンバージョンレンズ SMC-1

 

第1回沖縄フォトキャンプ「ジャングルジム」では、フォトコンテストを開催する。

グランプリや準グランプリ、また協賛企業賞には、協賛メーカー様から豪華な賞品を提供していただいた。

これから作り上げていく、まだ実績のないイベントへの協賛にご快諾いただいた関係者の皆様に、心より感謝を申し上げたい。

 

これから順番に、このHP内でフォトコンテストの賞品を紹介していく。

グランプリの賞品として、株式会社フィッシュアイ様より豪華カタログギフトを提供していただいた。

(有限会社イノン様からもグランプリの賞品をご提供いただいているが、そちらについては別の記事で紹介する。)

 

今日の記事では、その中から選べる製品の一つである「NA スーパーマクロコンバージョンレンズ SMC-1」について、上出から紹介したい。

できるだけ皆さんの参考になるよう、僕がどんなことを意識して使っているか、どんなコツがあるのかについて、作例をご覧いただきながら紹介するつもりだ。

ぜひ最後まで読んでみてほしい。

 

記事内に掲載する作例の撮影機材は、全て以下の通りである。

・Nikon D850

・AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

・nauticam SMC-1

・INON Z-330

撮影データ:f13  1/250秒  ISO64

 

「SMC-1」は、最大撮影倍率約2.3倍のクローズアップレンズ(マクロコンバージョンレンズ)である。

100㎜クラスのマクロレンズに装着した場合に、その効果を存分に発揮し、謳い文句の通り「超マクロの世界を堪能」できる。

 

※詳しいスペック等は、販売元のページをご参照いただきたい。

株式会社フィッシュアイ:SMC-1紹介ページ

 

「クローズアップレンズ」と聞くと、「小さいものを大きく撮れる」レンズだと認識される方も多いかもしれない。

もちろん、それは正しい。しかし、それだけではないというのが僕なりの考えだ。

実はちょうど、自身のブログにその旨を詳しく書いた。

 

blog陽だまりかくれんぼ:水中用クローズアップレンズはどんな時に使えばいいのか?

 

興味のある方は先にblog記事をご参照いただいた方が、理解は深まると思う。

お時間のない方は、もちろんこの記事だけ読んでいただければOKだ。

blogに書いたのは、ざっくり以下のような内容である。

■上出がクローズアップレンズ(SMC-1)を使うケースは以下の3つ

 

①被写体が小さくて、マクロレンズだけでは十分大きく写せない時

②動きの速くない生き物で、周辺をぼかして整理したい時

③できるだけ浮遊物の写り込みを減らしたい時

 

①に関しては、誰もが認識されている使い方だろう。

例えば体長数㎜のウミウシや魚の卵なんかは、カメラにつけているマクロレンズだけでは十分大きく写すことができない。

撮影データ:f8  1/250秒  ISO64

 

③に関しては、ここでは詳しく触れないが、特に普段透視度の悪い環境で潜っている方にとっては重要な話になるかもしれない。

撮影データ:f16  1/250秒  ISO100

 

この記事で解説したいのは、②に関連する話題だ。

つまり、SMC-1特有の、とろけるようなボケについてである。

 

細かい説明は割愛するが、SMC-1を使うと、100㎜クラスのマクロレンズだけで撮影する時と比べ、圧倒的にボケを作りやすくなる。

そして、このSMC-1で作るボケが、とろけるようだったり、あるいはキラキラのネオンのようだったり、とにかく美しいのだ。

撮影データ:f14  1/250秒  ISO64

 

個人的には、マクロ撮影においてはボケを生かした表現が好きなので、SMC-1は常に水中で持っているし、手放すことのできないアイテムである。

一方、僕の開催しているフォトセミナーに来てくださる方からは、「SMC-1を使いこなせない」という悩みもよく聞く。

 

本当によく聞くので、さすがに僕も「何が原因なんだろう?」と色々考えていたのだが、最近1つの答え(かどうかはわからないが)にたどり着いた。

それは、「SMC-1のワーキングディスタンスを知らないor知っているけど感覚がつかめていない」ということだ。

 

ワーキングディスタンスとは、レンズ先端から被写体までの距離のことである。

実は僕自身、SMC-1を使い始めた頃は、ワーキングディスタンスは5㎝くらいだと思っていた。

 

「105㎜マクロだと被写体に15㎝くらいまでしか寄れないけど、SMC-1をつければ約5㎝まで寄れるようになる。逆に、SMC-1をつけたら5㎝まで寄らないとピントが合わない」

 

そう思っていたのである。もしかしたら、僕と同じように思っている方もいるかもしれない。

 

しかし実は、SMC-1のワーキングディスタンスは約40~90㎜と、けっこう幅がある(100㎜クラスのマクロレンズにつけた場合)。

つまり、「被写体まで5㎝」じゃないとピントが合わないわけではない。この幅の間のどこかなら、普通にオートフォーカス(AF)でもピント合わせができるということだ。

はっきり言って、SMC-1を使いこなせるかどうかは、ここを理解して、さらに感覚として掴めるかどうかにつきる(感覚として掴むためには、どうしても反復練習が必要になる)。

撮影データ:f9  1/250秒  ISO64

 

ここから少し、実践的な話をしようと思う。

 

SMC-1を最短撮影距離(被写体まで4㎝くらい)で使う場合と、最長撮影距離(便宜上そう呼ぶ。被写体まで9㎝くらい)で使う場合では、ボケ方が全く異なる。

同じf値で撮影しても、被写体までの距離によって被写界深度が大きく異なるという事だ。

その点を理解した上でカメラの設定(特にf値)を決められると、思い通りの表現に近づく。

 

まずは、最短撮影距離、あるいは最短撮影距離付近で撮影する場合である。被写体までおおよそ4㎝~5㎝くらいだろうか。

「被写体まで●●㎝の時のf値はこれ」というような話でもないので、あくまでイメージとしてとらえてほしい。

 

SMC-1の最短撮影距離付近で撮影すると、被写界深度がとにかく浅くなる。

良く言えばとにかくボケてふんわり撮れるし、悪く言えば被写界深度が浅すぎてどこにピントが合っているかわからない、という写真になりがちだ。

 

なので、多少は絞り込む必要があると、僕自身は思っている。

個人的には、最短撮影距離付近で、絞り一桁で撮るということはない。絞りを開けてもf11くらい、絞り込むときはf20前後まで絞っている。

 

最短撮影距離付近で撮影すれば、絞り込んでも柔らかいボケが作れることがお分かりいただけるだろうか。

(写真に記載している撮影データはNikonの実効f値なので、CanonやSONYだと少し数値が異なる。)

撮影データ:f16  1/250秒  ISO200

 

それでは、最長撮影距離付近で撮影した時はどうだろう?

イメージとしては、被写体まで8㎝~9㎝くらいのケースである。

(6㎝~7㎝くらいの中間距離は、設定も中間くらいのイメージでとらえてほしい。)

 

先にも述べたが、使い始めた頃の僕は「SMC-1は被写体まで5㎝くらいの距離で使うモノ」だと思っていたので、そもそもこういう区別はしていなかった。

そのため、SMC-1の最長撮影距離付近でも、f値を二桁まで必ず絞っていた。

 

でも、今は違う。この距離で自分が求める理想的なボケを作るためには、f値一桁での撮影も有効だという事に気づいたのだ。

撮影データ:f9  1/250秒  ISO64

 

確かに被写界深度はかなり浅くなるし、「目のほんの一部にしかピントが合っていない」ということになるのだが、僕自身は現在そういう使い方をしている。

ちなみに、この記事でできるだけ作例を多く挙げているのも、細かい設定、特にf値を参考にしてほしいからだ。

撮影データ:f8  1/250秒  ISO64

 

「SMC-1のワーキングディスタンスを感覚として掴み、距離によってf値をコントロールする」

 

これができれば、もうSMC-1を使いこなしていると言えるだろう。

簡単ではないかもしれないが、「感覚」はたくさん使って掴むしかない。

逆を言えば、とりあえず使ってみることで、確実に慣れていく。

撮影データ:f9  1/250秒  ISO64

 

また、AF(オートフォーカス)で撮るのかMF(マニュアルフォーカス)で撮るのかによっても、使いやすさやピント合わせの精度は変わってくる。

僕の場合は、泳いでいる魚などはAFでピント合わせをして、動かない被写体や動きの遅いウミウシなどはMFでピントを追い込むことが多い。

細かいケース分けをするとそれだけでひとつの記事になってしまいそうなのでここでは避けるが、もし興味があればジャングルジムでお会いした時に色々質問してほしい。

 

SMC-1をすでに持っている方は、ジャングルジム主催者に色々相談しながら、当日もどんどん使ってみることで撮影の幅が広がるだろう。

まだお持ちでない方は(特にボケを生かした撮影が好きな方は)、早めに手に入れることをお勧めしたい。

 

ここまで読んでいただき、本当にありがたく思う。

この記事が少しでも参考になれば嬉しい。

 

 

文・写真:上出 俊作